desk of dusk

It's not dawn.

万年筆の話

 趣味に関するものは歳を重ねて使えるお金が増えると、必然的にその対象も高額なものになりがちです。好きなもののひとつに文房具がありますが、私にとってこれもまた同様でした。

 万年筆。それは良いもの。ただし現代においては実用性はもちろんあり、実用重視での需要もありますが、どちらかといえば趣味性で語られるものです。

 今や筆記具は進化を重ね、多くの筆記用具は芯を取り替えれば延々と書き続けられますし、安価な上にインクの進化で書き味の良いものは溢れています。それに引き換え、万年筆は高い。インクも安くはないし、扱いもセンシティブ。洗浄などの手間も必要。書き込む紙質もにじみや乾きから選ぶところがある。

 それでも尚、万年筆が欲しかったのはビジュアルもさることながら、書いたときにペン先が紙の表面を舐めるように滑る書き心地が好きになったから。万年筆を買ってから、手帳を持ち歩くようになったし、どうせ書くならばとパイロットのペン習字通信講座も始めました。仕事でも書き置きを残すときに一筆箋を使うようになりました。嫌々ながら書いていた仕事の年賀状も、ペン習字の練習のようなものと思うと少し前向きに取り組むことが出来ました。

 未だに万年筆をもっと使いたい、使うためには何を始めたら良いか、という道具に使われるような状態は多々あるものの、書くことに対して面倒だと思うことは少なくなりました。

 筆記用具に限らず、安くていいモノはたくさんあるけれども、自分の中で納得して、楽しみや充実感を味わいながら物事に取り組むことが出来る、これは得難いことです。万年筆にお金をかけて、それで得られる価値としては自分の中では十分に思います。

 ということで、皆様も万年筆を使ってみてはいかがでしょうか。