desk of dusk

It's not dawn.

キャップレスの話

 万年筆の話。そしてまた、パイロット製品の話。

 今回はキャップレス木軸Fニブです。f:id:rskud:20200212235839j:image

特徴いっぱいです。万年筆ながらもキャップ式ではなく、ノック機構なんです。ボールペンみたいな。それでいて密閉性は確保されているし、書き味も損なわれていない。不思議なものです。それでいて、1963年とかなり昔に開発されてからロングセラーです。その時代にこういうのを作ろうとする発想も当時としては斬新だろうし、実現したのもすごいですよね。そういう変わり種って、なんかいいじゃないですか。その変わり種がこれだけ長い間支持されてきたということですから(それはもはや変わり種ではないのでは?)、逆に言えば筆記具として求められている形はノック式シャープペンシルやボールペンと同じというトラディショナルな万年筆の形から離れることにもなるのかもしれませんが、そういう万年筆があってもいいのかもしれませんね。

 それだけでかなり特徴的なのですが、見た目もポイントがあります。それはクリップがペン先側についていること。一般的にはクリップとはノック側についているものですが、この万年筆はペン先側についていて(逆向きだと延々とインクがポケットの中で漏れるのでしょうけれども)、邪魔だろうなと思いきや、これが指を置くときにちょうどいい目安になる。ノックして、ペン先の向きを確かめて(万年筆は書くときにペン先の向きを合わせる必要があります)、書くというときに、見なくてもいいのです。キャップレスの利点を求める人はなるべく書くまでの工程を減らして、早く書きたいでしょうから、便利だと思います。

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 この他、スタンダードな樹脂軸や螺鈿細工の豪華仕様、金属軸などもありますし、スリムタイプのキャップレスデシモや軸をひねってペン先を繰り出すタイプのキャップレスフェルモなどありバリエーション豊富です。

軸といえば、このキャップレス木軸に近い色味の木材を採用しているボールペンもまたパイロットコーポレーションから販売されています。タイムラインという繰り出し式ボールペンのシリーズがあり、その中のPAST(過去)というモデルが似たような木材をグリップ部分に使用しています。タイムラインの名のとおり、PAST、ETERNAL、FUTURE、PRESENTと時間軸を名前にしており、材質やカラーリングが特徴です。ボールペンとしてもかなりいいグレードの替芯を使用していて、ぬらりとした書き心地が快感です。軸をひねるのですが、二段階の繰り出し式でまだ変身を残している、この意味がわかるか、と聞こえてくるようです。完全格納時は独特の形で、PASTに至っては色味も相まって葉巻のような形になっています。ひねったときの一段ずつのクリック感も心地よく、所有欲を満たしてくれます(所有欲だけではなく、手書きの領収証などガンガン書いていますが)。


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 脱線しましたが、いい万年筆です。ボールペンもですけれども。